第2話 クレマチス種子の地播法

第2話では、幾多のリスクを乗り越えて得られたクレマチスの種子を発根・発芽させる方法の一つとして、「地播法」(土に播く方法)について説明します。

その1 地播床の準備

ここでは、種子を土に播く容器を地播床と呼ぶことにします。「地播床は2〜3年間にわたって底面給水を継続すること」を前提として容器を選択する必要があります。

播く種子が少ない時は、直径10cmほどのポットでも十分ですが、播く種子が多い場合は市販の水稲苗箱(24.5 × 32 × 7.4cm;底部全面にメッシュ状の穴)を用いて、2.5cm幅に区画を入れて、地播床とするのが好適と考えます。

 

この容器の底に0.5〜1cm程の鹿沼土を敷き、その上に種播用土

赤玉土:水苔:バーミュキュライト:川砂 = 4:3:2:1

......を5〜7 cm入れ、地播床とします。

用土の各成分は小フルイを通過させて使用します。

 

その2 地播種の準備

一部のクレマチスの本では、地播前に
(1) 発芽を均一化するために、種子の皮をむく
(2) 播種する種子をダコニール1000倍液で殺菌する
......とありますが、個人的にはそれほど重要に感じたことはありません。


また、ほとんどのクレマチスの本で「トリマキ」とする(種子取り込み後、すぐさま地播きする)と説明されていますので、これに準じて種子を播くのが好ましいと考えます。

 

その3 クレマチス種子の地播法

地播床の深さ1〜2cmの部分の用土を除去した後、種子をピンセットで一粒ずつ挟み、相互に1cm以上の間隔をとり、土に押し込んで植え付けます。

植え付け後、用土をかぶせ、埋め戻します。ピンセットで種子を把持する時、種子をはじきとばすことがあるので注意してください。

 

その4 地播種子の標識

地播種子の内容、種子個数や地播年月日などを記入したプラスチックラベルを立てておきます。

記入には3年以上耐久性のあるマジックペンを用います。

また、日光による焼け・劣化を避けるため、念のため地中に入る部分にも記入することが望ましいと思います。

 

その5 地播床の管理

地播床は、日光は当っても雨の当たらない、風通しの良い場所(犬走りに類するような場所)に置き、2〜3年間底面給水を継続し、種子からの発芽を期待して育成します。この間、下記のポイントに留意して管理してください。


(1) 給水を切らさないように。

(2) こまめに除草。雑草が成長すると、抜き取り時に土の中の種子もほじくり出すおそれがあります。

(3) 落下物は早期に除去。

 

その6 発芽

一般的に、クレマチスの発芽は、交配後0.5〜1.5年です。

発芽し始めるのは、彼岸の中日の頃です。しかし、原種系やインテグリフォリア系、ビチセラ系を親とする交配品種の場合は発芽が早くなることがあります。

芽が出揃ったら、1000倍の液肥を毎月2回、土をはねないように注意して与えます。

 

その7 鉢上げから開花まで

幼苗が5cm程度に育ったら、通常のクレマチスの用土

赤玉土:腐葉土:ピートモス:川砂:鹿沼土 = 5:2:1:1:1

......を使って2〜3号のポリポットに鉢上げ(交配後1.0〜2.0年)します。

そして、液肥や置き肥などで十分肥培すると交配2.5年後の秋にはツルが30cmほどになり、その翌春には力強い芽生えが見られます。

さらに1年肥培すると、秋(交配後3.5年)には花をつけるものも出て来ますが、本来の花とはほど遠いものになることが多いと思われます。交配から4年目の春、蕾がちらほらと見えてきます。そして5月になるとようやく開花が始まります。中には、開花せず翌年、翌翌年になるものもあります。


成長に合わせて植木鉢のサイズアップをはかりつつ、毎年植え替えを行います。また、併せて支柱のサイズアップも行いましょう。

特に、植え替え時には、ラベル記入ミスのないように慎重に行います。

  

その8 開花後

「1つの果球から得られた種子であれば、どれも開花する花は同じ」ということはなく、交配番号単位をさらに株単位に細分化して管理する必要があります。

開花した花と交配親の花の関連性を詳細に比較し、そのデータを蓄積していくことで、今後の交配組み合わせに有用な情報を得ることができます。

開花した花が気に入ったものであれば、名前を付けましょう。すでに登録されたもの以外であれば、自由に付けられます。地名、山の名、川の名、人物の名などいずれもOKです。

 

また、保険をかける意味で挿し木をして、立ち枯れなどの事態に備えましょう。

安定した花になるには開花からさらに3年ほどかかる場合があり、気長に待つ必要があります。

 

その9 地播発根品、発芽品のZIP播法移行

地播後1年以上経過した10〜11月頃に地播床を掘り返すと、発根した種子(以下「発根品」)や、さらには発芽した種子(以下「発芽品」)が見つかります。

発根品は水洗いしてZIP袋に入れ(第3話 その2)、さらに発芽させてポット上げします(第3話 その4)。


発芽が1cm以下の発芽品は、前述の発根品と同様に処理します。

発芽が1cm以上の場合は、第3話その4に示す4分割ポットに種播用土で植え替えます。